書評 PR

エンド・オブ・ライフを読む|2020年ノンフィクション本屋大賞ノミネート作

エンド・オブ・ライフ 佐々涼子
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「エンド・オブ・ライフ」という本を読んでみました。。
ノンフィクション作家の佐々涼子さん執筆。

2020年ノンフィクション本屋大賞ノミネート作ということで、図書館で手に取ってみたのが「エンド・オブ・ライフ」との出会いでした。

軽い気持ちで読み進めていました。

「エンジェル・フライト」の佐々涼子さんの本だったというのを読んでる途中で気づき、30年近く前の過去が甦り、読み終わった後に不思議な気持ちになりました。

目次

エンド・オブ・ライフのについて

エンド・オブ・ライフは終末期をどのように生きるかを考えるノンフィクション。

舞台は渡辺西賀茂診療所という京都で訪問医療を行っている診療所。
ここで働く訪問看護師の森山さんがガンを患っているとうところからエンド・オブ・ライフは始まっています。

作者の佐々涼子さんの「エンジェル・フライト 国際霊柩送還士」という本を読んだ娘から感想を聞いていました。
「エンド・オブ・ライフ」も同じ佐々さんの本だというので興味深く読み進めていきます。

最期を迎える人と、そこに寄り添う人たちの姿を通して、終末期の在り方を考えるノンフィクション

エンド・オブ・ライフを読んで甦った過去

エンド・オブ・ライフを読んで30年近く前のことを思い出しました。

まだ20代、相方の突然の死。

突然と言っても亡くなるまでの4日か5日は病院で過ごすことができました。
医師からもう助かるのは難しいと言われていたので、ただただその時が訪れるまでを待つ時間。

苦しそうに痛みに耐える相方の姿を見るのがとても辛かった。
小さい子供を抱えて今後のことも考える余裕もなく、ただただその時の現実と向き合うだけだった。

エンド・オブ・ライフに出てくる森山さんの最期とはもちろん違います。
息を引き取ってから拍手で送ってほしいと願う森山さんと その願いをかなえた森山さんの家族。
「とうちゃん、よくがんばったね。とうちゃん、ありがとう」と奥さんの言葉。

私の相方と森山さんが重なることはないのだけど。

相方が息を引き取った時、医師から亡くなったことの告知の言葉が 遠くの空から聞こえてるようでした。。
やはり天気の良い朝。
医師の言葉を聞いた瞬間 頭の中ではこんな言葉を叫んでいました。

「これで楽になれるね、やっと苦しみから解放されるね」と。

30年近く前のことだけど、もちろん忘れたことはありません。
心の片隅の引出しにそっとしまっておいた記憶が 森山さんの最期の時を読んでよみがったようです。

「とうちゃん、よくがんばってね」と「やっと苦しみから解放されるね」というのは
思いは同じだったのかな。

ようやく自分を見つめなおす時間の余裕ができたのか、最近相方が逝った時のこと、生きていたときのことをやたら思い出す時間が多くなってます。
このタイミングで「エンド・オブ・ライフ」という本に出会えたことも自然な成り行きだったのかもしれません。

死んだ人はいい思い出しか残していかない

相方が亡くなってから30年近くの時間が経過しました。

「死んだ人はいい思い出しか残していかない」
これは、20代で相方を亡くした時に感じたこと。

結局一緒に笑ったことだけしか覚えていないし、楽しかったことしか思い出せない。

人間の脳ってそういうふうになっているのかな。

私は年齢を重ねてしまったけど、思い出す相方はまだ30代のまま。
人は記憶の中で永遠に生き続けるっていう言葉をアマゾンのレビューで読んだけど
死んだ人はいい思い出しか残していかないから 記憶の中で永遠に生き続けるということなのでしょう。

自分が余命宣告を受けたらどんな選択をするのだろうか?

「佐々さんにはわからないかもしれないな。当然だと思います。がんを体験したこともないんだから。。。」P209

森山さんのこの言葉が印象的でした。

もし、自分が余命宣告を受けたらどんな選択をするのだろうか?
想像ができないのが本音。

経験したことがないことだから 想像もできないのは当たり前だと思うのです。

  • 冷静に受け止めるものなのか
  • 取り乱して死にたくないと叫んでしまうのか
  • 絶望して泣き暮らしていくのか

自分がどうなってしまうのか想像すらできません。

ただ、渡辺西賀茂診療所のように24時間体制でバックアップしてくれる施設が近くにあれば、余命宣告をされても終末期をどうすごすのか選択肢が広げられますね。

二人に一人がガンになると言われている現代。

終末期にどう過ごすかを選択できるということを知れただけでも、「エンド・オブ・ライフ」を読んだ価値はあります。

もうそろそろ「終活」をしておかなければという年代になって、素晴らしい本と出会えたことに感謝。
たくさんの人に「エンド・オブ・ライフ」という本を読んでもらいたいと思います。

最期を迎える人と、そこに寄り添う人たちの姿を通して、終末期の在り方を考えるノンフィクション